田村 芳朗著


法  華  経



真理・生命・実践

中公新書(中央公論社)

法華経の成立  法華経の思想  法華経と日蓮主義


レジュメ作成  稲葉 八朗
(平成七年五月二十八日)




その3
大乗経典の成立

大乗仏教:【空】の原理・真意を確立  →  経典編集・・・・・『般若経』の完成
『般若経』:

大部より小部まで種々存在・最古のものは西暦50年までに完成
以後次第に増加         

『般若経』における【空】
「色を空ずるを以ての故に色空ならず。色即ち是れ空、空即ち定れ色」          
(『摩詞般若波羅密経』幻学品第十一)
「空の中には滅あることなく、また滅せしむるものもなし。諸法畢境空、即ち是れ涅槃」
(同上・実際品第八十)
「色即ち是れ空。色滅して空なるにあらず。色性おのずから空」
(『維摩経』入不こ法門品第九)



現実の事物(色)を玉葱の皮を1枚1枚むいていくように分析し 捨象していって「空」につきあたるのではない
そのように分析・捨象していって「空」という概念が生まれたのではない
そのように「空」というものを考えるから「空」を虚無と誤解することになる
生成躍動している事物の当処そのまま全体的に「空」と観ずるということ

「色は空に異ならず、空は色に異ならず。色即ち是れ空、空即ち是れ色」
 → 「色即ち是れ空、空即ち是れ色」 → 「色即是空・空即是色」(『般若心経』)

小乗仏教:事物を分析していってそのはてにおいて「空」と見た → 虚無におちいる
(析色入空観・析空観)
大乗仏教:事物の全体そのまま「空」と観ずる (体色入空観・体空観)

天台智(538−97)法華哲学創始者・綿密な論理を展開
てんだいちぎ              「空空」・「空亦復空」・・・空もまた空

小乗教徒:現実否定・捨てる

→ 空に固執・空の一辺に固着・偏執
→ 空が空という「もの」になる【ニヒリズムの典型】
「但空」(ナーガールジュナ『大智度論』巻第三十七)

大乗教徒:「不可得空」「不但空」

現実の諸々の事物や事象をありのままに広く全体的に観察・・・・・・・その真相が「空」

「空」をつかむことは

実は現実へと出ていくこと
現実の事物・事象を正しく生かすこと
→ 空の真意・・・・・・「真空妙有」
神経質の本態と療法
精神生活の開眼・医学博士 森田正馬 白揚社
P74 思想の矛盾・主観と客観・ ・・「あるがまま」

「空性の成立するところに、一切が成立する」
「空性の成立しないところに、一切は成立しない」
  →  「一切皆空」「一切皆成」    
(観四諦品第二十四)

ナーガールジュナ(約150−250 『中論』)
『般若経』にもとづいて空の体系化につとめる

不二」: 空の観念を相対する二者にあてはめていったもの
(『維摩経』入不二法門品第九)
男女の例:


それぞれが独立・固定した実体を有して存在しているのではない
「女あっての男」・「男あっての女」
相依相関しながら 男は男として 女は女として存在
わかりやすい!)
【空】: 事々物々が相依相関して全体一をなしながら
それぞれ生成躍動しているすがた・真相を名づける
→ シャカのいう「悟り」

認識論・実践論的言い換え
「空とは事々物々をありのまま(客観的)に一部分にとらわらわれることなく、全体的に観察することであり そうすることによってまた自己の主体的な実践がうまれてくるのである」

人我見(主観的)・法我見(客体的) → 人空(客観的)・法空(主体的)


人我見」:自己(を不動・絶対視し、そこから事物を見・判断ずること
・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・主観的・迷い・とらわれ
「俺はこういう男だから・・」「あいつは・・・」「アメリカ人は・・・」)

 真実には不動・固定視・絶対視されるものは自己には不存在・・・「人無我」「人空」
 「人無我」「人空」の真相を知るということ
   対象としての事物をそのものに即して「ありのまま」に見るということ・・・(客観的)

法我見」:対象物()を不動・絶対視し、それに執着すること・・・迷い・とらわれ
  真実には不動・固定視されるようなものは対象に不存在・・・・「法無我」「法空」
  「法無我」「法空」の真相を知るということ
  :対象物にとらわれることから自由となり
   逆に自己の主体的な心で対象を規制し 駆使するということ

」:虚無におちいることでなく 
       対象についても自己についても それを正しくあらしめまた生かすもの


男女不二・空」:







男女のいずれかを不動・固定視・絶対して 一方を他方に従属させることも誤りなれば それぞれ無関係な独立・固定の存経と見なすことも誤り

さりとて 男でも女でもないものに帰することを意味するのでもない

男は男として女は女として それぞれの持ち場・持ち味を充全に主体的に発揮しながらしかも一体であることをいったもの

男女不二・空」がもとになって真に男女の二がそれぞれ主体的に生かされてくるのである
 ススンデル!)

「不二而二・二而不二」 
天台宗六祖 妙楽湛然(711−782)(『法華玄義釈籤』巻第七上)

「仏」を「如来」(タターガタ)と別称することの意味
タターガタ:

タター・ガタ  (如去)
タター・アーガタ(如来)

如去」: 真相実相をありのままに(如実)に観察してそれと一体となったこと   
如来」: 一体になったところから逆に現実世界に出てきて
つかんだ真理を現実に活現し その真理を駆使して人々を救済すること

」:真相・真理を客観的に観察し 主体的に活用するもの → 「如来」と称する


「無国籍にものを見て、愛国的にペンをとる」
 戦前の新聞記者が先輩から受けた指導 ・・・かつてロータリーの卓話で聞く

真理を内容から定義・・・・・ 空(シューンヤ)・空性(シューンヤター)
   〃 をありかたから定義・・・ 如(タター)・真如(タタター)

真理:ダルマ(法)     【空】≠【無】(【虚無】)

【空】をさらに積極的に表現せんとして大乗仏教が発展
→ 発展にともない種々の経典が作成
『般若経』: 空の真意を確立すべくその原理的解明につとめる 
『法華経』: (AD50)・『華厳経』  空を積極時に表現する試み



大乗経典成立年代(4期に区分)

『般若経』→『維摩経』→『法華経』→『華厳経』『無量寿経』『阿弥陀経』(浄土経典)

法華経』:

空なる真理を積極的に表現して宇宙の統一的真理(一乗妙法)と見たて、それにもとづいて教説をあみだす・・・宇宙・世界の統一像を目ざす

華厳経』:


空なる真理を純一性という形に盛り 
その純一なる真理に照らされた世界を描写する・・宇宙・世界の理想像を描く
第1期大乗経典(1C−3C)
ナーガールジュナ(竜樹 AD200−300)   
空観を通しての大乗仏教の真理体系づけ
             『中論』『十二門論』『大智度論』・・作成

アーリアデーヴァ(弟子・提婆 聖天 AD170−270)              
『百論』『四百論』・・・・・・・・・・・・・・・・・

『中論』『十二門論』『百論』・・・・・・・・・・・・ 「三論」       
『中諭』『十二門論』『百論』『大哲度諭』・・・ 「四論」                  
 (三論宗・四論宗・・・中国)
4C
空なる真理を永遠・普遍の存在(法身常住)として一段と積極的に設定し それをもって、現実を包みこみ あるいはそれの現実内在(如来像・仏性)を説く一群の経典が出現
・・・如来像経典

如来像経典:

『如来蔵経』『不増不減経』『大法鼓経』『央掘摩羅経』
『勝曼経』『大乗涅槃経』『無上依経』

生滅・変化する現実相(現象)はどうなるか?
現象生起の説明原理・・・

アラーヤ識(阿頼耶識)を設定
『解深密経』『大乗阿毘達磨経』
第二期大乗経典・4C

阿頼耶識経典をうけて理論構成につとめる
アサンガ・・・ (兄・無着・AD310−390)
ヴァストヴァンドゥ・・ (弟・世親・AD320−400)
→ 唯識哲学の発生  →  唯識派(瑜伽行派)

アサンガ:・・ 『摂大乗論』『顕揚聖教論』『聖教阿毘達磨集論』
ヴァストヴァンドゥ:

『唯識二十論』『唯識三十頌』『仏性論』『摂大乗諭釈』
『法華経諭』                
・・・阿頼耶識のみならず如来像にもふれる

    阿頼耶識と如来像との止揚・統一が志向されだした

5C  両者の統合を試みた経典が出現・・・『入楞伽経』『大乗密厳経』
第三期大乗経典・5C

阿頼耶識と如来像との統合
不生不滅(不二)の永遠相と不滅(而二)の現実像との関係を明らかにしつつ、その統合をはかるもの
・・・・・・・・『大乗起信論』(AD6C)一応の完結

『大乗起信論』: アシュバゴ−シャ(馬鳴・2C)
阿頼耶識と如来像・永遠相と現実相との論理的整合づけが第三期大乗経典よりいっそうの進展
6Cの作品(中国で)

7C 密教経典『大日経』(中観系) 『金剛頂経』(唯識系)
第四期大乗経典・7C


その後は俗信仰との結びつきもあって仏教は退廃

1203



中インドのヴィクラマシラー寺院がイスラム教徒の軍隊によって破壊
これを契機として仏教は終末
この間仏教・諸経典はインド外の講地域に流入しそれらの地域で命脈を保ちつつ発展



法華経の成立史

『法華経』:28章よりなる(元来は27章)
提婆達多品第十二は天台智豈頁あたりから



『法華経』の成立区分

第一類:方便品第二〜綬学無綬学人記品第九(50年頃の成立) 『法華経』の原始分
シャカの説法相手(対告衆)は声聞(小乗)
個人成仏についての保障(授記)
授記:

声聞が一乗妙法に目覚めて起死回生し
未来にひとしく仏になることを認証したもの    
    ・・・未来の成仏にたいする仏の保障
韻文(偶頌)を敷衍する形で散文(長文)が存在
韻文は重頌のかたちをなす
韻文が先にできそれを補足すべく散文ができる
書写なし・・暗記時代に名残
地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天・・六界(六道)まで


第二類:序品第一・法師品第十〜囑累品第二十一(100年頃の成立)
一群をなして作成され第一類に付知
一類と二類を一貫せしめるために序品第一が作られる
 (安楽行品第十三と従智涌出品第十四の間に一線ありの説)
シャカの説法相手(対告衆)は菩薩
社会布教の使命付与(付囑・囑類)

付囑・囑類:

仏のあとをうけて社会布教 ないし真理の現実実践につとめる使命の付与 大乗仏教の大乗仏教たるゆえんの象徴
・・・大乗菩薩に関係ふかいもの
囑類品: 法の付託・使命の付与についての章

菩  薩: ボーディサットヴァ   
「悟りへと向かう人」と「悟りから来る人」の二様の意味が可能
└──────→ 声聞と対置の場合
現実の中におりたち 悟りを社会に具現すべく努力する人
『法華経』二類で強調

第二類

・・・『法華経』の中心部
・・・菩薩運動の推進
如来寿量品第十六:シャカの久遠仏であることを明したもの
重頌の形をなさないものが多い
韻文と散文を合して全体の意味が通じる
・・・・・・両者同時完成・書写あり

十界地獄餓鬼畜生阿修羅人間声聞縁学菩薩
(大乗仏教ができてしばらく時をへてのち声聞・縁学・菩薩・仏・・・・加上)

【法師品第十】: 仏の使徒(如来使)としての菩薩が強調
菩薩:


仏なき後 法の一句だけでも受持し宣布するものは、衆生救済のために仏の世界からこの世につかわされた
他の使徒であり「如来使」であると賛嘆

如来の室に入り、
如来の衣をつけ、
如来の座にすわって、恐れることなく法を説け

「如来の室・衣・座とは慈悲 忍辱 空性をさす」
「慈悲とは人をいつくしみ いたわること」
「忍辱とは世をうらまず たえしのぶこと」
「空性とはとらわれをはなれ 広大無辺の世界に身をおくこと」
    
菩薩行者の人生に対する態度・・・弘経の三軌
くぎょうのさんき

小乗仏教:

慈悲は現実にかかわる行為
空性は現実をこえでた境地      
→ 空性の前に慈悲は捨てられるべきである

法師品: 慈悲と空性の一体       
→ 空性が積極的な現実実践の規範として受けとられている
・・・大乗仏教の空の積極的把握


【見宝塔品第十一】:
多宝如来のすわる宝塔が空中に立ち
シャカは地上から空中の宝塔へと身をうつし
多宝如来と並んですわる(二仏並座)
諸法にちらばるシャカの分身仏が釆集してシャカに帰一し
また諸世界は通じて一仏土となる
多宝塔はシャカの過去のすがた(過去仏)

それと並び座したことはシャカが久しい過去から仏であったことを象徴
・・・シャカの久遠仏たることの暗示    
分身集来・通一仏土
・・・シャカの統一仏たることの表現
【如来寿量品第十五】の前ぶれ・菩薩行の強調

末世におけるこの娑婆世界を中心としての菩薩の現実実践
その菩薩にたいする法の付囑
「宝塔涌現」・「分身来集」・「通一仏土」・・・菩薩道の唱道


【勧持品第十二】: 悪世における布教の使命付与
使命をうけた菩薩の殉難・殉教の実践
菩薩たちが忍難布教の誓願をたててしめくくる


【信解品第四】:


長者窮子のたとえ
   長者・・・シャカ仏
   窮子・・・ニヒリストの小乗仏教徒     
『法華経』作成者の属する社会が予測される
(商業生産を主とする社会)・・・大乗教徒一般

小乗教徒:

援助者として資産家と結びつき 僧団を維持
世俗的営みを否定・僧院主義に立てこもる
オウム出家信者
大乗教徒:


現実社会の中に身を置くもの
あるいは現実生活の営みを積極的に肯定するもの
大乗仏教興起の背景に【商業経済】の発展

AD50北方インドを中心としてクシャーナ王朝
口一マとの交流 → 貨幣経済・商業生産隆盛
仏をたとえるのに資産家の長者にした理由の一つ

【法師功徳品第 十八】:
世俗生活の営みを積極的に肯定

【法師品第十】【勧持品第十二】:
菩薩にふりかかる種々の激しい迫害
法華グループだけでなく大乗教徒一般についていえる
迫害を煽動したのは小乗教徒側
「如来使」 【法師品】:殉教精神の高揚【勧持品】         
『法華経』ができて初めて見られた

日蓮・日蓮主義者に生きる勇気と支え
宗教のエリート意識         
強力な仲間集団を構成
使徒意識・殉教意識にみちた菩薩精神
仏教としては特異
法華経』: 菩薩道を尖鋭に描きあげたもの


【安楽行品第十三】:
勧持品にくらべて菩薩行が静的・消極的
勧持品の殉難捨命の激しい実践についていけない初心の菩薩のため
に一段下げて説いたとの説(対告衆は菩薩)
末世における菩薩行 菩薩行者の処世
布教に対しての自己内省・自己を持する態度を教戒


【従地涌出品第十四】:
現実の娑婆世界から上行等の四菩薩を首とする菩薩集団が涌出
本来の仏弟子たちであることが明示
かれらこそ仏の後継者・使命をうけて法をひろめる者である
現実社会の中に苦悩するものこそ真の仏教者

「娑婆世界において、下方の虚空の境界に住する」
(「虚空」=「空」)
  
・・・

現実の娑婆にありながら しかもそれにとらわれず「空」をよりどころにする
涌出品:

現実超脱のあまり「空」に停滞し その結果ニヒルにおちいってしまった聖者(声聞)のありかたを批判
現実の(仮)の中に生活する人間凡夫(声聞)の姿にむしろ価値があること

現実の中にありながら現実に沈没せず真理具現・現実改革に励むものとしてそのかぎり空を背景にしながらひかえていること

   このような虚空(空)と現実(仮)の不二にして二・二にして不二                
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(不二而二)・(二而不二)
   いわば弁証法的躍動が菩薩行・真実の仏道であることを表示したもの

涌出品の偈・・・ 菩薩のありかたを蓮華を借りて説く
「蓮華の水に染まらぬごとく、今ここに、かれらは大地をさいて集まりきたる」 
(不染世間法 如蓮華在水 従地而涌出)
蓮華:

インドにおいて古くから賛美・宗教的憧憬の対象・人間の純粋精神
菩薩行の象徴
『維摩経』 ・・・世間に着せざること蓮華の如く、常に能く空寂の行に入る」
(仏国品第一)
空・無為にとどまるものには仏法の花は咲かず 成仏しない
「譬えば、高原の陸地に蓮華を生せず、卑湿のお泥にすなわち
「煩悩の泥中 すなわち衆生あって仏法をおこすのみ」
(仏道品第八)

【如来寿量品第十五】
一般的にはシャカの永遠性
「無数の地涌の菩薩衆がシャカの本来の弟子であること」
・・・この疑問が契機
・・・シャカは悟りをひらき 仏となってまもないのに
   どうしてかくも多くの弟子たちが存するのか?
寿量品: シャカは久遠の苦から仏となったもの
仏となってより無限の時をへていることを説明
[シャカ=久遠仏]の主演は菩薩に関連したもの
寿量品における永遠性
  「久しい以前に成仏した如来は、寿命無量であって、常に住する」
  「わたしには、いまなおかつての菩薩行は成しとげられていず
                     寿命の量もまた満たされていない」
 
限りなく絶えることのない菩薩行を通して「仏の永遠」を証明
限りない現実実践の中に永遠の生命が躍動する

【分別功徳品第十六】〜【法師功徳品第十八】
一乗の真理と久遠の生命を奉じ「現実実践に励む者」の功徳を賛嘆

【常不軽菩薩品第十九】
菩薩行のモデルケースとしての常不軽菩薩
末世において種々の迫害をうけながらも 人々が菩薩行をおこなって仏になることに希望を失わず 人間の善性を信頼して軽んずることなく会う人ごとに礼拝をくりかえす     
・・・かぎりない人間信頼・人間礼拝・・・典型的菩薩行
宮沢賢治 アメニモマケズ)

【如来神力品第二十】



上行等の地涌の菩薩「真理の付託」がなされ 未来における真理の実 践・具現にたいして激励の賛辞
神力品のことば
      ・・・日蓮に大いなる生きがいと勇気を与える
      ・・・道元は唱えながら死す

【囑累品第二十一】
他のすべてに「真理の付託」がなされる

神力品は上行等の菩薩に付託・・・・・・別付囑
      囑累品はすべてのものへ付託・・・・・・総付囑
      付囑されたものたちは仏の使命遂行を誓う
      かくして菩薩たちにたいする仏の使命付与は完了し
      空中の多宝塔はもとのところへ置かれ
      集まったシャカの分身仏たちもそれぞれの地に帰り
      菩薩たちは現実の娑婆世界にもどっていく
            ・・・・・この世に生をうけた意義


『法華経』
  原始分
第一類:

空なる真理を積極的に宇苗の統一的真理と説きしめし、それにもとづいて統一的な宇宙実相・世界像を樹立

第二類: 第一類の真理にもとづいての人生道       
あるいはその真理の現実実践を説きあかすべく作成
菩薩が重要な役割・主要な問題
菩薩精神・菩薩行の強調
 『法華経』の最重要部分


【観世音菩薩普門品第二十四(二十五)】
後世珍重・独立の教典
『法華経』の全体的な特色からすれば付加的
第二十二章以下は後世になって挿入されたもの

塔: 法師品以前では舎利塔が説かれる・以後では経塔が強調
観念主義におちいった小乗教徒の僧院主義にたいする批判
在家信者の間でおこったシャカの遺骨崇拝ないし舎利塔崇拝にみられる
俗信的・即物的な在俗主義にたいする反省を物語っている


経典を納めた経塔は批判と反省をとおして僧院主義と在俗主義の両者を止揚し、大乗菩薩道の真精神を確立した結果の産物


第三類:薬王菩薩本事品第二十二〜普賢菩薩勧発品第二十七(150年頃の成立)
一般におきていった思想や信仰を順次取り入れて作られる
ナーガールジュナ(竜樹 AD 200−300)
『大智度論』に『法華経』の最後の章まで引用される・・・作成


法華原点と訳本
『法華経』の漢訳部分訳と全部訳・多数 全訳:六訳三存三欠
現存する漢訳本
『正法華経』 (竺法護 286) 十巻二十七品
『妙法蓮華経』(鳩摩羅什406) 七巻二十七品(名訳)
『添品妙法蓮華経』
(闍那崛多・達磨箜多 601) 七巻二十七品

原典写本
    ネパール・カシミール・中央アジアから発見(近代)
    ホジソン(英1800−94 ネパール駐在公使)
    仏典のサンスクリット語写本(『法華経』の写本も含まれる)

ネパール系 ・・・完全な形 11世紀以降
中央アジア系 ・・・断片   それ以前7・8世紀のものもある
カシミール・ギルギット 5・6世紀のもの(ネパール系)最古の仏典写本         
グプタ文字行書体

ケルン(蘭インド学仏教学者)───┐
                      ├ 『法華原典』出版(1908〜12)
南条文雄(日本)────────┘    デーヴァ・ナーガリー文字
ネパール系諸本に中央アジア系のペトロフスキー本などを加えて校訂

荻原雲来・土田勝弥 ・・・再校訂1934〜1935
ケルン ・・・英訳 1884
ビュヌルフ ・・・仏訳 1852
スレーンドラボーディ・ナナム・イェシェーデー 7C〜8C
・・・チベット語訳 『正法白蓮華と名づくる大乗経』
河口慧海 ・・・ └→日本語訳『梵蔵伝訳妙法白蓮華経』1924
南条文雄・泉芳王景 ・・・サンスクリット語からの日本語訳
     『梵漢対照新訳法華経』1913
岡 教邃 『梵文和訳法華経』1923                 
     他にも多種語訳・広く珍重

中国・日本における『法華経』信奉は絶大
法華教学(世界観・人生観・政治理念)
文芸方面(法華文学)