後 編  マックス・ウェーバーの学問的業績

第四章  近代社会の特徴

1・ 「機械のように」・・・ 軍隊・官庁・企業・工場
あの軍隊
軍隊は一つのメカニズムであり、その中で人間は命令に対して自動機械の正確さで反射的に動く一つの装置と化さねばならない

問題の提出
古代や中世の武人・役人・大工左官などの手工業者
        【比較】
今の軍人・公務員・会社員・労働者 ・・・【近代性の特徴】

大量成員団体の合理的運営
大規模・秩序正しい運営 → 大量成員団体の合理的運営 → 組織の力
                    【これらの営みに共通した組織の構造】

近代的団体の外面的共通点
1 ・ 勤務者の勤務先と home とが分離(軍隊・官庁も)

2 ・ 勤務先で勤務者と物的経営者手段が分離
   (勤務に必要な物資は国家・企業から支給)

3 ・ 勤務の専門化 → 分業
   勤務者が団体運営の規律遵守・・旺盛な責任観念
   勤務先での私情・私的要求を滅却・・・・・職業的禁欲
    そのための教育・・・学校・兵営・工場
    「一絲乱れぬ運営」の基礎

4 ・ 献身の目標
   古代・中世・・・命令・服従の関係 → 主従関係
   全人的・情誼的・有情者的献身が美徳

   現代・・・・・・勤務者全体が共通の献身・勤務の目標を保持
          目標に対し平等の資格

「組織の力」の源泉としてのディシプリン(集団的訓練)
軍  隊:精神的肉体的装置
官  庁:企業・工場も同様
勤務者:大量的集団的に一定年限の間一定類型の専門的勤務能力を学習した大衆


2・ 近代的官僚制
ビジネスライク
勤務者は集団的訓練を身につけた専門的勤務者・職業人・・・禁欲的基調  事務的

「官僚制」の概念
近代的合理的官僚制
 内部的特徴・・・・・ディシプリン

 外部的特徴
  (1)責任の範囲が明示
  (2)指揮系統の確立
  (3)勤務者はサラリーマン(勤務に必要な物的手段が分離)  報酬は一定化した貨幣
  (4)すべての事務は文書で(文書主義)
  (5)勤務者は自由な雇用関係に立つ

ウェーバーの貢献の一つ
近代社会全体の特徴を運営組織の構造分析・官僚制の概念でとらえる

3・ 近代資本主義
パンチ・カード
パンチ・カード・・・伝票(能率を高めるため)  (※本書S51発行)

合理的運営
経営者・職員・労働者・株主
全体は利潤を出来るだけ上げる目標に向かって「機械のように」動く
個々の人間は「部分的装置」
利潤という否人格的(没主観的)数量の一点に向かって「緊張」
勤務者 : 連動装置によって緊縛

複式簿記の場合
複式簿記もパンチ・カードも経営全体を利潤という数量の支配下に緊張させ、システムの強制によって勤務者を「人間歯車」に変える合理的手段

資本主義の概念
人間の行動:「こころ指し」と「目論見」(MWの言語的概念的レッテル)

ベルグソンの分類
行 為: もくろまれたもの・・・意識的
身振り:思わず発するもの・・自働的

行為の背後にある意識をとらえることによって理解する
  MWの社会学の方法的特徴・・・理解社会学

資本家的・資本主義的・・・資本計算が背後の意識としてある行為
  (古代・中世でも社会の物質生活の構成要素として資本主義は存在) 

資本主義的の仕方で社会の欲望を満足させることになる・・近代
  現代資本主義=近代資本主義

近代資本主義経済の特徴としての資本計算の合理性
  資本計算が最高度に合理的(古代中世の前近代的資本主義との比較)
  【近代資本主義の特徴】

合理的資本計算の客観的条件・・近代を一貫する諸特徴
「高度に合理的な資本計算という主体的条件は種々の客観的条件に守られて実現される」
        客観的条件を手繰りだし、近代資本主義を概念つける・MW


《註》











歴史的事象とそれに関連する条件との間の助長促進関係
適合的因果連関・・・・MW

適合的因果連関の見きわめのために、現実とはちがった思惟的条件を仮定し、そこでおこる結果を「日常の経験」に基づいて考え、個々からこの条件が演じた役割りを判断
                              ・・・・・・・・・・・・客観的可能性判断・・・MW

歴史学的分析はこのような客観性を持った因果的説明を中心とすることによって科学的になる
   【主体の生き方と客観的条件配置とをからみあわた点がMWの分析方法の特徴】

最高度に合理的な資本計算は「合理的な経営」と表裏
   近代の合理的技術と不可分・・運営の構造(官僚制)と連結

近代的合理的「官僚制」は全面的に近代資本主義と連結
近代国家の行政・私法における「官僚制」構造
   近代国家は「官僚制」的中央集権により・・
   「広域に」「持続的に」治安を確立
   大規模生産に不可欠な市場を形成
   商法・統一的貨幣制度を創設・保証・維持

   専門家としての官僚が国家の計画的合理的な経済政策(財政・金融政策など)
   を可能ならしめる

MW:営みが合理的であるためには「線香花火的」であってはならない
    近代資本主義は「膨大な固定資本の運用」が特徴
    経営は「持続的」「計画的」を要す
    不安定な事情のもとでは固定資本の投資は不可能
    不安定の危険は固定投資の最大の敵
    近代国家の国家活動は成分法秩序のもと
    専門的かつ「無私的」な官僚によって計画性と安定性を持って執行される
    偶然性・し意性を脱しはじめて予見しうるものとなる
    企業は安心して国家活動をその企業活動に織り込むことが可
    固定投資(近代経営に特徴的)はこれによってはじめて可能
    前近代的の王朝国家や封建国家のもとでは


行政・私法が伝統的な支配者の私意によって無軌道に動く場合、長期的な企業活動は忌避され、営利が権力への寄生や投資に走る
 
流通経済組織
社会主義との対比のため資本主義経済の仕組みを考察

【二つの典型】
@



A





中央に経済計画を立案する国家機関があり、一切が此の計画に従う
社会経済内部には自己の意志にしたがって自律的に行動する主体なし
・・・生産手段の国有化(計画経済組織)

国家は存在するが「夜警国家」にとどまり、経済を完全に自由放任
自律的に行動する家計と企業が、私益を追及しながら互いに有無相通ずる交換によって結合    ・・・・・・財産の私有(流通経済組織)

Aにおいては商品の交換が市場を通じて行なわれるが、この市場で成立する価格が資本計算に基準を与える・・・・MWの(近代)資本主義の概念

国家はいつの時代でも「夜警国家」にとどまることはできない
多かれ少なかれ経済に干渉し経済を統制する

二つの合理性とそのアンティノミー
近代資本主義の定義・・経営の合理化を着眼の中心
資本主義社会の特徴の社会問題も注意

知性の能力は推理・・・広範に支配することが合理的

  官 僚 制 :近代資本主義の合理性
  組織の力:合理性

知性の能力の利用した合理性・・・・・・・【形式的合理性】
組織の力・・・利潤に奉仕

国民の期待:利潤のみでなく「理想」も・
        理想にてらして時々の国民経済の状態を価値判断
        利潤には合理的であっても「理想」に不合理の場合もある

理想に照らしてみた場合の合理性・・・・・【実質的合理性】
近代資本主義は十分に実質的に不合理たりうる
    (官僚制も形式的には合理的であるが実質的に不合理たりうる)

「政治と経済」の問題への通路
MW・近代資本主義を合理性に着眼して特徴づける
近代資本主義は「形式的合理性」にとどまる


4・ 支配における近代的と前近代的・・家族と権威
社会の比較
官僚制と近代資本主義によって現代の特徴の明示
(1) ウェーバーの社会理論の一特色
@ 団 体 :人間の集団で組織を作ったもの
組 織 :集団が秩序づけられていること
団体の管理:「命令服従」の関係
官僚制:管理構造の一つの場合
MW:「管理の構造」に着眼した社会理論
A 人と人との関係(社会関係)のうち「支配関係」にも注目
封建的支配だけでなく、民主主義においても公僕としての公務員と 一般国民との間に「命令服従」関係があれば支配関係がある

「支配」は通常団体の「管理」のかたちをとる(@とAは表裏)
「団体の管理」はこの意味の「支配」
「支配」と「団体の管理」

支配構造の分析
資本主義の定義の場合「資本家の行動の背後にある意識」に注目
支配に対する「態度の性質」(命令者・服従者が支配に関して抱く意識・態度) を中心に「支配」ないし「団体の構造」のかたちを考察

《註》 天皇およびその委任を受けたものの命令は正しいと信じ、これに服した
【支配が「支配の正しい信念」を植え付けようとする】

(2) 態度の考察
近代と前近代の「支配」に関する意識・態度の相違

MWの分類

 依法的支配・・・・・近代的支配
 伝統的支配
 カリスマ的支配

有情者(木石でない人間)としての私人対私人の関係はそこに知性による合理化が作用せぬかぎり全人的たろうとする・・・有情者的関係・情誼的

私人間の全人的関係
(感情の動物)人間対人間では自然
「坊主にくけりゃけさまでにくい」・自然

「罪をにくんで人をにくまず」・・・集団的訓練と知性の強い抵抗が必要
  ・つめたい・客観的・理知的・没主観的
  ・禁欲的性格・有情者的態度と対照的

(3) 近代的支配の没主観的性格
地主と小作が軍隊で新兵と上官になった関係
私情無く、公私混同無く、事務的態度で接する
  → 官僚制・近代資本主義の基底

依法的支配・・・没主観的態度(法典や操典)
「行為規範」が合理的に概念化文章化され無矛盾に編成された体 系が存在する
命令者に服従する場合その服従は「有情的」ではない
私人としての命令者に服従するのではない

行為規範の体系によって命令者がその権限を有するからである
服従者の服従は「没主観的」な秩序に対してささげられる

依存的支配の最重要・・・・「官僚制」

(4) カリスマ的支配

近代的支配:没主観的
前近代支配:有情者的
@

カリスマ的支配
予言者・英雄に自発的に傾倒し、全人的に服従する場合
A



伝統的支配
家長的支配・家長制
「権威服従的な態度に不可欠な能力を人間の性格に与えるものは、最も重要な教育の力としての家族である」

(5) 家と権威
家族は一体である
家は「一緒に苦労し、一緒に楽しむ共同体」
家はたがいに善意をもっていつくしみあう
互いに善意が期待できるから、気楽に腹のそこをぶちまけて話し合い同感しあうことが出来る
「勘定はすべて水くさい」としてしりぞけ、各人はめいめい力に応じて貢献し(財の貯えがゆるすかぎり)欲望にしたがって享受する
                                → 家族共産主義

「家」は平等と同胞愛とが支配する「国」

家族愛(対内道徳)が高ければ、逆に仲間外の「他人」(対外道徳)に対しては冷酷である  (氏・村・習俗団体などの共同体にも見られる)       

善意の倫理・同胞愛の倫理
家における持続的共同組織の内に受肉化された生活態度となる
→ 長幼の序が・年齢・強さ・知恵により自然発生
→ 持続的家族道徳的感情(ピエテート)を形成

ピエテートと権威
家以外の多数の共同体の根底
家はその根源的な基礎

第一は強者の(女子供に対する男子の・防衛能力労働能力)
第二は経験のより多きものの(年齢) → 権威の根源的な基礎

年齢(経験):権威服従者の権威あるものに対するピエテート、
        仲間同志の間のピエテートの根源的な基礎

        それは祖先に対するピエテートとして宗教関係に入り込む
        → 前近代的家臣・旗本元・封建騎士的従臣のピエテート

        家は一体 → 祖先も一体

「先祖以来のしきたり・伝統は神聖である」という信念
      ・・・・・家族道徳の決定的契機

慣習に対しての呪術的な信頼
   この信頼の上に気楽な生活が安住
   この慣習の破壊は家族の不幸によって復讐されるという信念

   家長はこうした伝統による家長
   神聖な伝統を一切の損傷からまもる

(6) 伝統的支配・家長制・家産制
支配が伝統を神聖視する態度に基づく支配・伝統的支配
  団体における支配が家における家長に対するごとく

有情者的に畏敬が捧げられる場合・・・・・・・・・・家長制

家長制:伝統的支配の最も大切な場合・・・・・・・封建的
                       → 前近代的支配

     カリスマ的支配団体をのぞけばだいたい伝統的支配の構造
       (家長的構造を持つ)  【前近代的支配】

平等な仲間の集団にとどまることは少ない
  長が支配のため団体の役員に自分の手下をすえ
  団体の管理に必要な物的手段を占有する場合が多い
  団体の中に上下の身分ができ、団体の財政が長の管理下に
  おかれる  ・・・・・・  中世の国家

統治権と財産権の区別がつかず
  君主権は売買されたり
  抵当にはいったり
  相続に当たって分割されたり
  財産のように取り扱われた・・・・・・・家産国家

・家 産 制
・家産官僚制
・家長的家産制

家産制のもとで臣僚はさまざまな形でその給養をうる
官職に結び付いて役得をかせぐ
一定の勤務地が与えられる  (MW・フリュンデ)

(7) 要約
伝統的支配:慣習的反復制を持つ
日常的(教育や慣れによる)

カリスマ的支配:意識の最深部において激情的爆発的におこる
非日常的(キリスト出現当時の原始キリスト教)
  特に予言者の啓示は内面から革新
  社会を前進させようとするが激情的爆発的
  → 間もなく堕落し(既成宗教家して)
  → 革新的意義を失う

しかし外部的条件に制約されながら知性による「没主観化」が徐々に進行

西洋では古代・中世と好都合に進行  →  近代社会にたどり着く
中国・インドでは好都合の条件に恵まれず  →  近代化は低迷


5・ 資本主義における近代的と前近代的
統制を強化すれば私益追及はなくなるか
営  利:私益の追及
営利心:自由経済(資本主義的仕組み)
     MW・・・・・・・・「間違いである」

営利追及の根強さ
商   業・・・・・・・沈黙交換として古い起源をもつ
遠隔商業・・・・・・・大昔から
金持ち・金貸し・・・アッシリヤ・バビロニア
             《金銭欲・営利欲は人類の歴史と共に古い》

前近代的社会:内輪の者に善意・勘定をさける
          他人に冷淡・非人情的(対内道徳・対外道徳) 
《市民的資本主義の発達のおくれた国々のほうが金儲けのための利己心の厚顔はななはだしい》

前近代的資本主義の問題
打算的に金儲け本位に元手を利用しようとする人間(MW・資本家)・・・大昔から
「資本家的」「資本主義的」・・・古くからの社会経済の一つの構成要素

商人資本主義
商人の形態
  隊商・コムメンダによる遠隔商業・両替・貨幣取り扱い業務
    (MW・商人資本主義)

政治寄生的資本主義
国家財政が貨幣化された場合
→ 日常的に公共団体に金融し
→ 政治的権力を通じて「濡れ手で粟をつかむ」者の出現
→ 租税請負の出現
   バビロニア・ギリシャ・ローマ・インド・中国など

租税請負
中 国: マンダリン「官吏」が行なう
ローマ: 私的資本家が企業的に営む(ブブリカーニ)
                資本主義的
豪商が資金を醵出
都市国家の戦争・海賊に金融しもうけを山分けする場合

ブランデーション(奴隷などを使った植民地的営利農場)
政治的利権を買収、不自由民・半自由民を権力によって搾取する場合

政党・政治家に金融して政争・内乱を成功せしめその制覇を経済的に利用する場合
(MW・すべて政治寄生的資本主義)
ギリシャ・ローマの「古代資本主義」
奴隷に基礎をおく・政治依存的性質が強い

前近代的資本主義の非合理制と近代資本主義の合理性
近代的産業資本主義
 ・自由・禁欲的訓練を持った労働者
 ・性格緻密な組織的な計算
 ・回収を予定される固定設備
 ・大衆の暮らしのための日常消費物資を大量生産
 ・自由市場で売る

前近代的資本主義
 ・遠隔商業・戦争・内乱・政争と結んだ営利
 ・一攫千金を夢見る・・・・・冒険資本主義
 ・不自由労働の使用からくる経営の非能率
 ・大衆の日常需要の平和的充足でなく戦争・海賊等の暴力の直接の行使や財政によって略奪
 ・経済的に非合理性 ・・・・・・ 現存する

支配の構造と営利の様式
「営利の様式」の相違は「支配の構造」に関連
前近代社会・「家産君主」の権威が絶対
絶対である「伝統」が規定されてない場合
→ 君主の気ままにまかすほかはない
  サルタン(回教国):典型的気ままであるが伝統的支配の側面を持つ
               ・・・サルタニズム

               行政司法が支配者の気まぐれにまかされ
              支配者をも拘束する客観的に安定した法律体系がなく
              経営樹立の可能性の無いところでは・・・・固定投資は不可能
                  → 【前近代の営利を非合理化させる】

6・ 全近代的伝統の根強さとカリスマ
(1) ウェーバーの歴史学的業績
合理的資本主義・・西洋の近代に出現
近代化の問題・・・MWの最大の関心事

MW・近代的合理的資本主義が成立しなかった場合を詳細に調査
原因は自然的地理的条件や国民性よりも、むしろ「伝統」
特に「支配の構造」と「宗教意識」

(2) 前近代国家

中国(漢・唐・明・清)
   強い中央集権力・・家産官僚制
   分権化の傾向がおこり、中央集権力は持続しない
    → 王と民の中間の清(高官)が勢力を持つ
    → 高官が勝手に勢力をのばす
      家産国家の財政も関連(非現代的中央集権的計画的財政)

   中央政府
   地方高官から一定の租税と兵を取り立て
    → あとは高官にゆだねる状態
    → 高官は租税請負人・・・役得をもうける
    → 分権化が昂進・・・封建制度と同様の場合もある

   武力を持った支配層が事実上のローカルな僚主権を持つ
                     (MW・フリュンデ封建制度)
西洋(西洋中世の封建制度)
  「王」対「臣」ではなく「自由民」対「自由民」の間から
  「英雄的カリスマ的関係」として生ずる
                    ・・・・・・純粋封建制度
                      (MW・レーエン封建制度)

《日本の封建制度》

旗本:藩士の禄(徳川時代) ・・・・・・ 純粋封建的でない
                      西洋の封(レーエン)とことなる

【家臣的フリュンデ】
大名:レーエン封建制度にちかいが、幕府の監視によって自由が著しく制限される
    発生過程にさかのぼれば王朝国家の王権の衰退から生じたもの
                            【フリュンデ封建制度的傾向】


《日本:主人に対する従者側の献身的態度が極度に強い》
武士:中国の読書人・インドのブーラマンのごとく
    生活態度において代表的・支配的な社会層


日本の生活態度の「精神」の重要な特性は、宗教的契機以外の諸事情、政治的社会的構造における封建的性格(若干の儒教仏教の影響)

(3) 世俗的因子の合理化作用とその限界
前近代性・伝統を神聖不可侵と見る

人間の営利心・・・伝統の呪術的支配を弱めるか
           (商業・家族道徳を弛緩させる作用・・・MW)

        MW:私益の追及は他方ではむしろ「伝統主義の強化」をもたらす


《MWの歴史の見方についての注意》

社会の合理化について
  外からの力によるもの・・・(世俗的な力)
  内からの力によるもの・・・(非世俗的な力)を考える

  外からの力・・・商業・市場の発展 → 商品生産の発展
         ・・・他に、戦争・科学など(テンニース・社会学論文集)

         「対内道徳と対外道徳との間の障害の完全な排除」
         「商人原則が対内道徳支配下の共同体経済への侵入」
                   (共同体内部のピエテート関係の克服)

 MW:外からの力による合理化だけでは近代化は不可能
     中国の考察から確固たるものとした
      (プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神に対するテンニース
      の批判は彼の無理解)


     内部の力(半世俗的力・信仰の力)がなければ「近代化」は不可能

     「信仰さえ深ければどんな信仰でもよい」 ではない
     内面的「神秘体験」を重んずる宗教は不適 → 単に伝統を強化

     好都合な客観的条件配置が与えられ、内此世的禁欲が強く大衆をとらえた時
     前近代的な伝統と権威とははじめて打破克服される

                                         ・・・・・呪術の克服

前近代の特権者・・・王・臣・政治寄生的資本家(僧侶・祭司)
             特権者の物質生活・・・ 政治支配力に寄生
             伝統の破壊・・・・・・・・・支配的政治的秩序の撹乱
             政治秩序の撹乱・・・・・ 物質生活を根底から動揺させる


伝統主義によって合理主義への発展を障害とする・・役人・地主・商人

   呪術の神聖視・・・・大きな役割り(背後に特権者の物質的関心)
   占有された利権・・・既成の社会行為を固定化し強く持続させる傾向
   私的な営利企業者の利潤の機会・・・唯一の土着の合理的な革新力


古典的社会主義批判
  「社会主義は官僚主義」(H・スペンサー)
  「競争は廉価の最善の保証・国家の経済に対する干渉は一種の独占を形成 し、
   独占は略奪者ないし怠惰者を利する危険を持つ」(J・S・ミル)

古典的批判の伝統にしたがった批判
  「社会主義における政治力と経済力の結合の危険」(L・ニーバー)
  「共産主義は生産資本における私有財産を廃止するが、しかし集団所属の
   資本を管理する官庁の中に一種の財産を作り上げる」(W・リップマン)

MWの批判・・・共通するが一層慎重・周到

《註》 「儒教と道教」・典型的な営利の国・中国の分析
営利追及
富に対する高い、排他的な尊重
此世のことしか考えない「功利的合理主義」
これらは近代資本主義の創出とは縁もゆかりもない


「インド教と仏教」・典型的な形而上学の国・インドの分析
一切を捨てた、ただ固有の意味の「世界観」
ただ世界における生の「意味」を叡知的思索をもって執拗に追跡した点において世界の模範たる国・・・・・・インド

比類なき「激しい解脱の要求「と「比類なく徹底した思索」にもかかわらず、その伝統主義的な「カスト制度」に少しの傷も負わすことが出来なかった


(4) カリスマの構造と役割り
  前近代的伝統・・進歩への契機を窒息させる → 社会停滞

  予言者(カリスマ)の出現・・・内面的革新作用


英雄的カリスマ
非凡な実力によって人は動き、伝統を無視することも可能
しかし予言者のような倫理的効果は期待できぬ

純粋なカリスマ・・・激情的・経済を無視
伝統的合理的な日常の経済、形状的な「収入」をそれに向けられた継続 的な経済活動によって獲得すること
      ・・・・・・・・カリスマにとって「品位なきこと」
「家計」の基礎に上に立つ一切の「家長制的」構造との峻厳な対立


カリスマを担うもの・・・・自らも此世の範の外に立つ
              此世の放棄が必要
カリスマの力・・・・・・・・反経済的精神の力


純粋カリスマ的集団の生活様式
  「直接に感じられる連帯制」が基礎・共産主義的計算を没却・・・家族共産制

修道僧(宗教的信仰に基づく集団における)
  共同に労働・寄進による共同の生活【教団の愛の共産主義】

戦士集団                    【戦友愛の共産主義】
  「人間本来無一物」・・・「わが物」の観念の消滅


カリスマの純粋を保証するもの・・・・・・共産制の維持
 ・共同の戦陣生活の危険
 ・此世を捨てた年若き使徒の愛の信条

しかし、激情は脆い
 時を経るにつれ(予言者の死亡・後継者)カリスマ的集団は当初の革命的・純粋性を失う
   → 此世・日常・経済に妥協しはじめる
   → カリスマの日常化
   → カリスマは集団幹部の地位・利益擁護の看板となる
   →カリスマは新しい伝統と家長的支配の中に埋没


「再び灰をかきまぜてみよう。われわれはいまだに熱い部分を見出だすであろう。 そしてついには火の粉が飛び散り、再び火が燃え上がりうるであろう」    
  (ベルグソン)



第五章  近代主義の成立 ・「呪術の克服」のために
1・ 近代化の問題
人間革命
官僚制(近代的官僚制)・・・・・近代社会の特徴

  「近代化」:官僚制の支配的だけでなく「新しい人間類型」の生誕が必要
         (文物制度だけでなく生活態度・生活信条)

  人間そのものが根本からかわること(ドイツ・日本が好例)

  生き甲斐の発見
      理想をどこまで激しく追及し・生活をどこまで倫理化するか

問題の限定
近代社会の成立の道行は複雑 MW:近代人の生誕に重点

2・ 理想と利益
不条理なものに存在を賭ける
日本・中国

現    代 
: 宗教的に寛容・「ぐうたら」なことを持って伝統とする

: 生活が世俗的・「世俗的」なものが幅をきかす

             生き甲斐・信条・理想の軽視
             「理想」の再考

ビルマ・インド・回教団・・・・戒律・儀礼は厳重


「人間は不条理なもの、ないし、信条にその存在を賭けうる唯一の動物」  (ベルグソン)

インタレストとアイデアル
@  主体的なものの歴史における役割り・・・軽視すべからず
A  理念の役割りの重要視過ぎ・・・・・・・・・ 謬り

人間の行動を直接支配しているのは私的欲求(物質・観念) ・理念ではないが、私的欲求の動力学が、人間の行動を推進している場合、『理念が作り出した世界像』 はしばしば 『転轍手』 として如何なる道を推進せしめるかを規定した・・・・・・・・MW


MW : 「宗教と社会」を「理論的・分析的」に取り扱う
     世界宗教の経済倫理・経済と社会・宗教社会学

     宗教(主体的生活倫理)の役割りを学問的に限定する

信仰と商業の自由
イギリス国民による大進歩
  ◎信仰・・・清教徒の英雄的信仰
    商業・・・近代資本主義
    自由・・・近代民主主義(モンテスキュー 1689−1755)

   「信仰」が商業・自由に果した役割りを強調
   「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」・・・・・・現代合理主義の自叙伝

考察の前進
「西洋の宗教的伝統は如何にしてこうした改革を用意したか」
「東洋の宗教的伝統は如何にしてこれと反対の効果しか持ちえなかったか」 ・・・MWの考察

本章の課題
「現代合理主義の比較史的自叙伝」
カルヴィニズム・清教主義の近代化に対する歴史的役割り


3・ 禁欲的プロテスタンティズム
これまでの説明との連絡
清教主義とその歴史的役割りを「近代化」の問題を中心として

カルヴィンの宗教思想 
二重予定説
(1) 神と人間
神・・・一切を創造・被造物の運命を絶対的に完全に独裁

 ・神と人間の距離は絶対に越えられない
 ・来世の運命も神の手中・人知のおよばぬところ
  カルヴィン・神観の帰結の追及

神・・・正義の神(イスラエルにおけるヤーヴェ)
 ・倫理的に正しい人を救拯
 ・激しい命令的性質を加える(イスラエルの予言者)

キリスト教に伝承
 ・救拯されるためには、生活態度を徹底的の合理化・倫理化

カルヴィン派:慈愛の神よりも旧約的正義の神

(2) 罪の僕
原罪意識の再強化

「人間は罪に汚れ尽くされ、救済をもたらすような精神的善意志する能力 を完全に喪失している」
「善に背反し、罪に死している『自然の状態』における人間は自力では 『恩寵の状態』に達せないし、準備することも出来ない」

(3) 予定説・カルヴィンの二重予定説
原罪との激しい闘争
この闘争に勝利し救拯と恩寵の喜悦に到達しても、この勝利は「自力」とは感じ られない
  ・・・神の賜物と感じる

「救拯は天地創造の昔から予定してある」・・・予定説

ルター派   :予定説が徹底されず、むしろ弱化

カルヴィン派 :予定的帰結を徹底追及
          信仰・善行為などの人間の「自力」では変えられない
          救拯を予定されたもの・滅亡を予定されたものが峻別
          二重予定説

(4) 神のための人間
神が万物を創造したのも、救拯滅亡を峻別したのも「神の栄光を増さんがため」である

「神のために人間がある」・・・君君たらずとも臣臣たれ

“滅亡しか予定されずとも「神の栄光を増すために」「神の力の道具」として献身せよ”

若干の補足的説明
清教徒への影響
(1) 信仰の波の記録的昂揚の時代
16・7世紀のイギリス・・・一般大衆は熱狂的に救拯の欲求 (資本主義前夜)
              ・此世よりも来世が重要・確実

(2) 感性の蔑視
清教徒による一切の非造物崇拝の排撃
地上的娯楽遊興をも排撃
   1618年ジェイムズ一世の「日曜日の娯楽奨励」に清教徒が徹底抗争
   メイ・フラワー号によるニュー・イングランドへの移住

清教徒:「感性は罪悪」
     「神の意志か・非造物的虚栄か」の二者択一だけに照らして評価

文化に影響・・・イギリスにおける音楽の衰退

神秘主義(神の直感的体験に救拯を求める)への道が閉ざされる
感情や気分は如何に崇高に見えても、畢境自己欺瞞的である
「世界の意味」を問う形而上学的欲求が消え去る

(3) 恩寵は「義しく勤勉な生活」によりてのみ
カトリック教会:一般俗人大衆への恩寵の配給機関

ルター派    :聖礼典による贖罪は完全に消滅せず
          ルター :「人は信仰によりてのみ義とされる」
               僧俗の区別を廃止

カルヴィン派 :教会も聖礼典も役に立たず
         最後には神も役に立たぬ
         「神のために人がおり、人のために神がいるのではない」

          カルヴィニス:恐ろしく激しい緊張の中に生きることを要求される
                  いささかの油断も許されない

原罪感情が導くもの
  @ 謙遜・自卑(ルター派
  A 緊張と直面し「絶え間ない、組織的人生の戦い」として生きる
    戦闘的教会 (清教徒・・・・MW)

(4) 神の没主観化と此世に対する没主観的態度
「現代」・・・・・人間のための機械ではなく、機械のための人間

カルヴィン派
  ・神のための人間
  ・神と人間は親子のような有情者的関係ではない
  ・神は完全に没主観的
  ・神は自己の栄光を増すために此世をつくり人間をおいた
  ・この世は神の摂理にしたがうものとして是認されるべき
  ・すべてではない
  ・感性的なものは非造物崇拝として悪魔にぞくする
  ・これに対しては仮借なき闘争を挑むべきである

「・・・感性的でない此世の部分については、合目的的として理性が認めうる部分は、そのまま是認されるべきである。この意味においては此世逃避的であることはゆるされぬ。むしろ此世にとどまり、一方においては感性的非造物聖化と仮借なく戦うと共に、他方においては此世の反感性的理性的秩序を高め、これによって神意にかなうことに献身せねばならない」


プロテスタント:自然科学を愛好
   弁神的形而上学を捨て「実利自然探求」
   神の事業の成果は此世の内に断片的にしか示されないから、
   形而上学的概念的思索では「世界の意味」は把握できない

  禁欲主義から見た17世紀の経験主義:自然における神を探求する人を神に導く

  哲学的思索は神から離れしめる 
  自然と社会:その合理的秩序は神意を礼するもの
                       → なんら形而上学的思弁を要しない

          「余はここに一匹のしらみを解剖して諸氏に神の摂理を証拠立てよう」

  神の認識と意志は、神の事業の認識によって進められる
  主観的信仰よりも、信仰の行為

隣人愛の没主観化
清教徒の宗教的関心
生活態度
隣人愛の理念
 
:人間ではなく神に向かう
:有情者的ではなく没主観的
:没主観化・・・非有情者的
 人への奉仕でなく、神への奉仕

(慈善事業において、孤児に道化師の衣装を着用させ、隊列を組んで教会へ)
  ・・・人間的侮辱だが、それだけ神の栄光を増す
      ・・・隣人に対する関係の「人間らしさ」の消滅

MW:清教主義の職業倫理は原始キリスト教におけるような「愛の普遍主義」を放棄した・・・・


4・ 「職業」の理念と個人主義
二重予定説の社会的帰結の問題
如何にしてカルヴィニズムの宗教的思想がこういう生活信条を導いたか
如何にしてそれに鉄のごとく堅固な宗教的武装を与えたか

達人の信仰
来世における救拯・・・「当時」記録的に激しい問題
信仰の量においては「現在」が大
質においては「当時」は宗教的英雄・達人

世俗化・啓蒙時代

達人信仰に可能な型・遁此世的浄想と内此世的禁欲
中世のカトリック教会:恩寵の配給機関

【達人は如何にして自己の救拯をもとめたか】

MWの分析方法

@

神秘主義の道(インド・出家遁世)
神秘的体験において神にひたされた神の力の容器となる
A

神の力の道具としてこの世の内部において、神の神意にかなわぬ人間的要求を 禁遏し神意の実現のみに献身・・・・・清教徒

二重予定説と此世的禁欲
清教徒の内此世的禁欲・教義の帰結 → 【主観的感情よりも客観的業績】

「此世は感性的なるものを禁遏し、神意に適するものを昴揚する戦場」
「人々は神の栄光を増すための道具」

二重予定説・宿命論・・・ここからさらに激しい内此世的禁欲

救拯へのあこがれ・・・救拯の約束はなくとも、安心のため確かさの確認
救拯の確認の欲求への教義の適応・・・内此世的禁欲(カルヴィンの死後)

西洋の宗教:禁欲と勤労(働かざるもの食うべからず)
中世修道院:ますます強化
宗教改革  :僧俗の区別を排し、世俗大衆まで拡張

不断の勤労はそれ自体禁欲・悪魔の入り込む隙ができず
                    救拯の確かさに達する道

日常生活への関心
世界は「人類の効用」にそなえて、組織と構成において驚くほど合目的
                (聖書の啓示からも、自然科学的考察からも)

職業:Beluf(獨)
   :Calling(英)  神の命令

「職業」の概念(二重予定説の帰結)  
職業」:真の生き甲斐 → 世俗の仕事の外にある
商売」:生計のための手段 → 身すぎ世すぎの手段

宗教改革の時代の「職業」の概念
「世俗の職業・商売・金もうけ」 → 「神から課せられた使命の遂行」

「手段でなく目的」
  責任・忠実・堪能が要求される

「職業」が手段であれば職業を通じて神に奉仕することも「手段」

勤勉さは職業への勤勉さとしてのみ存する
  職業への勤勉に一切の努力が集中されるべき
  他の一切の世俗的・自然的欲望満足は断固禁遏
  倫理的に正しい唯一の生活態度
  啓蒙主義とはことなり、反世俗的意味

宗教改革の所産・・・「職業」の概念
  (清教徒・資本主義経済機構成立以前・・・反世俗・非合理)

この宗教的・反世俗・非合理的支持が「伝統主義」の抵抗に坑して「合理化」を実現

個人主義の問題(二重予定説のいま一つの帰結)
この「職業」の概念が「近代化」の歴史的役割りをになえた
反権威主義・反伝統主義と関連

精神の孤立化
《神とのもっとも深い交渉はただ孤独なる魂の秘密の内にのみ見出だされる》

「自らたすくるものが救われる」
  冷静で、市民的な、独立自主の成功者・・・輝かしい道徳的称賛

前近代的生活態度の否定
清教徒:感情でなく「意志と理性」を重んずる
     有情者的人間関係に基礎をおく前近代的なものを排撃

資本主義の精神
清教徒・職業労働を尊重(伝統に盲従することではない)

「職業労働は伝統と権威を離れて、神意にかなうごとく選択されるべき」
          (道徳的で、一般の福祉に貢献し、さらにもうかるもの


【勤労の態度】:非有情者的・没主観的・スピィーディー
  ・一定の目標を設定
  ・抜け目なく計画・計算
  ・タクティクスを持って目前の敵とゲームを争う
  ・蓄財よりもより良い効率自体が目標


清教主義:資本主義前夜にかかる生活態度の人間類型を大量生産
       (近代的合理主義的生活態度)

資本主義の精神
   今日での生きるために不可避の生活態度

非合理的動機にもとずく合理主義者
「経済的合理主義」の発生場所
   宗教に無関心な「自由な啓蒙主義」
   ただ此世しか考えられない「功利主義」の所産・・・MWは否定

たんに此世への適合に目的をおく合理主義・営利主義では盤石のごとき「伝統の重圧」を破砕しえない
これを破砕するものは「宗教的倫理」に根底をおいた
此世の内部において、しかも来世を目指しておこなわれる

生活態度の合理化・禁欲的合理主義
此世に対する世俗主義的な適応ではなく、非合理的宗教的動機から出発しつつ、しかも此世内部に生きる変革でなければならない

清教主義者:非合理的動機から出発する合理主義者
        反伝統主義的人間類型を形成
        前近代から近代への推移の要因となる

資本主義成立史の問題に対するウェーバーの貢献

「資本主義成立史」について
@

現代の資本主義社会をそのまま朔及させて、「宗教」とは関係のない「世俗的合理主義」を持って「近代化」の精神的要因とする
A


成立期において近代資本主義をにない、伝統的権威と徹底的に抗争した新興中産階級と、禁欲的プロテスタンティズムとの相関関係を、歴史的事実として、強調する議論  (事実として指摘するのみにとどまる)
 
MW・・・Aを支持・事実を分析・その間に存在する因果関係を論争的に説明
近代資本主義とその特徴「経済的合理主義の成立」原因の一つを 「禁欲的プロテスタンティズム」に帰属する

問題の社会的・政治的側面
清教徒:非有情者的関係・伝統の権威の否定 
        → その経済以外の方面における影響
     神の意志や隣人愛を没主観的に理解
        → 団体の形成は「近代的方向」をたどる

MW:「社会組織におけるカルヴィニズムのうたがいなき優越性」
      それの政治・社会生活の民主主義に与えた効果


5・ ドイツとイギリス
ルター主義との対照
清教主義とルター派の信仰の対照

カルヴィン:無限全能的な神の観念
      ・人間の行為に対する個人的良心の絶対的支配権を確保
      ・此世内部での積極的活動に刺激

ルター  :良心の自由・予定説・職業の責務を説く
      ・カルヴィンの先駆であるが不徹底

神秘主義的傾向
ルター:信仰によりてのみ義とせられる
    ・内面に沈潜し神の恩寵を神秘的に体験することで救済をうる
    ・人間は神の道具ではなく、神の容器
    ・救拯の道は内此世的だが、禁欲ではなく神秘的体験・観想
    ・「内此世的禁欲」の刺激をあたえず
    ・「方法的生活態度」への強い要求も生まず

伝統主義および家長制との妥協
ルター:伝統的家長制的権威との妥協
    「汝は汝の父と汝の母とを敬うべし」

(われわれの良心と主人とを軽んじて怒らしめることなく、かえってこれを尊敬し、これに仕事し従い、愛しなければならない)


主人 :地主・親方・領主・工場主・部隊長・領邦君主・皇帝

《何処でも、誰でも、ルター派の家庭の子供は「家長」の前では復唱しながら成長する》
   → 心からの従順と謙虚とすべての権力への服従
   → この世の主人・権力者に対する一切の驕慢と不従順への憎悪観
   →【家長制気質の国民につちかう】
              職業観だけではなく、国家観、戦争観とも結びつき
              ドイツの保守主義・軍国主義の精神的基盤を提供

ルターの国家観
ルター:国家を教会の下におかず並列させた
     独自の主権を持ち神のみにしたがう
     人間が国家に服従すべきである

【国家】:神より構成をあたえられ、異教徒および悪人から平和 と治安を守る任務を持つ


「ルターの権力の賛美は、マッキャベリに似たものがある。違いはルターがこの権力を《理性の法の維持》(福音書への自発的服従)に結び付けたことだけである」

ルターの戦争観
「国国たらずとも、民は民でなければならぬ」
  戦争・革命・信仰の圧迫にあっても能動的反抗を許さず、ただ受動的抵抗だけを認める
  他方、一端緩急あれば、キリスト教とは無批判、無条件に戦争に加わらな ければならぬ

ビジネスとしての国家と神としての国家
アングロ・サクソンとの比較におけるドイツの近代化の遅れ
    この前近代性は「宗教意識」の相違と関連・・・・・・・・MW

清教主義の特徴  :一切の非造物に対しリスペクトを知らず、一切の非造物神化を否定
清教主義の支配地 :カリスマ的敬意は一切放逐
                    ↓
            【官の執行はビジネスの一つ】
             官吏は他と同様に罪を負えるもの
             たまたまその地位についたもの

ドイツの官職観 :超人的なものを考える
           ルター派の影響と無関係ではない
           【神意にかなったお上の力】の権威
                    ↓
             純粋・感情的な国家形而上学

歪んだ近代化
近代資本主義・官僚制はレディー・メードとしてドイツ・日本に輸入
  → 国家・社会は近代化
  → 「組織の力」の発揮や物質文明の享受

    しかし「それを創出した生活態度」は輸入されず生活態度は「土着」
        「木に竹を続ぐ」 → 制度文物は円満に機能しえない・・・・近代化の不成熟


6・ 呪術と伝統
「呪術の克服」としての近代化
近代社会の成立・16・17世紀のイギリス
清教主義の貢献を「呪術の克服」としてもとらえる・・・MW

呪術と科学
呪術の科学との対照
呪術的信仰・自然、社会は因果律にしたがう
法則は経験と結びつく
法則の性質が科学とことなる
法則と事実の結びつきかた・背後を超自然的な力を信じる
法則はこの呪力と結ばれている
法則の基礎の事実(と信じられているもの)
  ・合理的推論によって確認しない
神秘的な「超機械的な」因果律の支配(カリスマのごときもの)
呪力が特定のもの、人に象徴されることをMWは重要視

呪術の停滞化作用
法則の頑固さ・呪術的因果は学問の作業仮説のように後で変革されない

  「丙午の女は縁起が悪い」・・・・・判で押した繰り返し
                  ・・・・・社会の固定的停滞化

誰か夢なき
人間の弱さ :一切を科学的に現実を直視することの難しさ
環境は「物」:呪術は時には環境を人に好意あるものとする 

        呪術的表象は、進歩を犠牲として、生活に安易と気楽さを与える

呪術対予言、祭司対予言者
呪術と予言の対照・・・・MWの特徴

預言者:宗教が相当発達した後で出現
     神観念が整理
     神が倫理性を帯び良俗・法・正義と関連

     職業的祭司・呪司が成長した後
     洗練はされているが神秘的力と神秘的因果律の表象の上に立つ

「人間の背後には種々の動機の複雑な複合体がよこたわっている」
「人間は複雑である。いくつかの要求が競合しあったまま、われわれの行動の動機 を形成している」


呪術の目標:世俗的安易
        呪術の「御利益の確率」もちりぢり

祭 司 :神聖な伝統的儀礼の監視者 
預言者:個別的・伝統的な戒律・儀礼・立法を意識
     既成の伝統と激しく抗争
     新しい生き方を身を持って示す
     人の意識の深層に新しい生き甲斐
     預言者にとって神聖なのは伝統でなく心情

     「倫理的合理化」:非世俗的救済のため

呪 術 :此世的「御利益」

     呪術的倫理・・・呪術的動機にもとずくタブー的行為規範の体系
     預言者宗教・・・一つの創造・飛躍

清純純真な心情を目指し
   → 倫理的合理化が深刻に行なわれる
   → 倫理化の目的が、非此世的

呪術克服の種子
預言・・・反呪術性・呪術克服的性格
     宗教的責務の「心情倫理」への体系化
     生活態度に革命の作用
     旧約聖書の預言者・釈迦
         (プラトン・孔子は哲学者、教師)

カリスマの日常化・呪術の残存
呪術は預言者によって克服される(一掃ではない)
残存部は依然として伝統主義の精神的支番

呪術・・・世俗的安易の道
預言・・・緊張増加への道・英雄倫理
     預言者と使徒の集まりにとどまった教団・・・大衆拡大を希望
     大衆(特に農民)・・・力強い呪術信仰・呪術倫理にとどまる

教団指導者は役人・吏僚にちかい祭司になる
儀礼が固定化・儀礼の墨守に恩寵 → 此世の「緊張」緩和
「既成宗教化」は呪術信仰に対する予言の妥協
伝統は大衆の呪術信仰によって絶対不可侵の神聖さをくわえる


7・ 近代合理主義の比較史的自叙伝
呪術克服としての近代合理主義
科学や知性は「予見」を本質とする
現代(科学時代):呪力が消え「予見可能性」が支配 → 現代合理主義

清教主義における呪術の克服
禁欲的プロテスタンティズム:神は存在
 ・二重予定説において隠れている
 ・救済のため禁欲
 ・厳格な生活規制反呪術的・反伝統的
              新社会の創造

伝統の相違の問題
西洋と東洋
 ・信仰の主要支持層の相違
 ・宗教的伝統そのものの相違

8・ 都市と市民
社会層の信仰との関連の問題
MW・宗教の教義と社会学的影響の特徴をその「支持層」との関連で考察
  「如何なる社会層が、その宗教の実践倫理に最も強く影響し特徴的性格を作りだしたか」

「その社会層は、生活態度を特定の方向に発展させるためのどのような要素を持っていたか」


【世界宗教を担った社会層・宣伝者】

儒    教 :世界の秩序を維持する・・・ 「官僚」
インド教 :世界の秩序を維持する・・・ 「呪司」
仏    教 :世界を遍歴する ・・・・・・・・ 「托鉢僧」
回    教 :世界を従える ・・・・・・・・・・ 「戦士」
ユダヤ教 :渡り者の・・・・・・・・・・・・・・ 「商人」
キリスト教 「旅行手工業者」


階級の「物質的利益」のあらわれとしてでなく「社会的状況」によく適合した「倫理・救済論の観念形態的な担い手」として分類

西洋の特徴としての自由都市と市民
  「西洋だけが『都市』と『市民』をもった」

【西洋】
  ・自己固有の法律と裁判所
  ・固有の自治的行政機関(ある範囲内で)
  ・自己固有の財政と軍隊を持つ

   「市民」・裁判に参加
    ・行政当事者を選挙
    ・直接間接に政策に干輿
    ・ときには武器をとって自己の都市を守り得るもの

こうした市民による都市は西洋固有


【東洋】
  ・商工業中心・政治的中心の「人口密集地区」は存在
  ・中央政府から派遣された吏僚の支配力が強化
  ・都市の自治団的性格は希薄
  ・いわゆる「市民」は存在せず

   いかにしてこうなったか

古代官僚国家と都市
BC.17 騎士団戦車(地中海東部から中国にかけて普及)
都市国家が各地に出現(中国・インドにおいても)
城壁・防衛団体・騎士の結合

「 良 」 :自己の負担において完全に武装し得る騎士
「都市」 :「良」民の平等自由に祭祀を介した神聖な結合

      MW「中国は日本と正反対に大きな城壁をめぐらした都市の国家である」


自由都市に対抗する勢力・・・古代官僚都市
  ・感慨耕作のための治水工事を基礎


家産官僚制・・・エジプト・メソポタミア・中国
  ・軍隊・・自己の負担で武装する自由人ではない
   王に臣属・給養される家臣


都市国家と対照的性質

「家産官僚国家」の拡充強化は「自由都市」の発展を圧迫・窒息

ローマ・ギリシャ→ 中近東 → 東にいくにつれ、都市が「市民的性格」を失っている

古代都市と中世都市
ギリシャ・ローマ









家産制国家の影響を免れる
戦争における大衆軍隊が技術的勝利
  (訓練された重甲歩兵を中心)

【貴族支配から平民支配の都市に変化】
 貴族都市から民主制的平民都市に進む
 デマゴーグ・政党の出現

 デマゴーグ :大衆に呼びかける人民指導者
 政党 : 政権に対する非徒党的・自発的・ 自由意志的共鳴に元尽く結合

ローマ以後 古代社会は没落・・・「西洋の精神は長夜の眠りに沈んだ」
中世都市 :営利と団体形成とが「政治」よりも「産業」に一掃強く依存
(古代との違い)

こうした変遷はあったが、かかる「市民を持った都市」が西洋の特徴(東洋に対して)
巨大な西洋の精神的遺産の基礎・・・保存・発展

近代化の担当者としての「市民」
西洋特有の自由都市・・最も包括的・生産的な近代合主義の基盤

イスラエルの宗教(キリスト教の先駆)の歴史的意義と比肩しうるもの
  ▼ギリシャの精神文化
  ▼ローマ法
  ▼カトリック教会組織(ローマ的官職概念に基づく)
  ▼プロテスタンティズム(中世的身分的秩序を破砕しつつ発展させた)

市民としてのキリスト教の特徴・実践的合理主義
キリスト教・古代・中世・清教主義を通じて
「都市」特有の・「市民特有」の宗教

他の都市と比べられない「西洋の都市」と「市民層」が主要舞台
手工業者信仰としての性質・・・・・・・実践的合理主義の傾向
(知識人信仰・・・・・・・理論合理主義の傾向)

イスラエルの予言者においてすでに庶民的
キリスト教の平民宗教的性質・・・イスラエルに源流
旧約の政治的予言者の出現
ダビテ・ソロモン等の家産制官僚国家が成立
階級文化が進行
農民の部衛能力と政治的発言権とを略奪された時代

預言者:農民の側に立って特権階級に反逆する
     (インド・中国の予言者は特権階級層に属する)


イスラエルの預言者
  ・強烈な倫理的宗教的激情
  ・庶民的立場の反逆者に共通
  ・世界の意味を俗習にとらわれず根源的に探ろうとする態度
  ・物質的考慮にとらわれぬ
  ・ひたすら此世を戦場として「地の民」のため戦おうとする傾向


インドの預言者
  ・解脱改悟を求める


中国の読書人
  ・審美的鑑賞に陶酔

近代化の諸原因
キリスト教・清教主義の重要な支持者・・・市民
       【「都市」「市民」:近代化の決定的基盤】


禁欲的プロテスタンティズムのほかに
  ▼ローマ法に出発する形式的合理的な法律的思惟の発展
  ▼アラビヤを経由するギリシャの科学的思惟の文芸復興後の展開
  ▼傭兵軍隊を経由する騎士軍隊より近代的大衆軍隊への軍制の変化
  ▼商業の発達に基づく財政の合理化(近代的予算制度の成立)
  ▼絶対王政下の中央集権的行政機構の確立
    (地方的封建勢力の破砕・農民開放)

9・ 西洋の倫理と東洋の倫理
神観の相違・世界の秩序と神
西洋の神観・イスラエルの伝統をうける
  ・神は世界の創造者
  ・万能の力をもって非造物を支配・管理する正義の神
  ・世界支配的・人格的・倫理的・創造神

  【神観の相違】・・・社会経済史的条件に制約を受ける


中国の皇帝
メソポタミアの王権
エジプト


:雨司に起源・それをまつるのが天
:人工潅漑から
:河流統制・砂漠の無から世界を作る
 ヤーヴェ(エホバ)に影響
 一神論の成立
   

【イスラエル固有の事情】
  国民生活の倫理化の責務はイスラエル民属とヤーヴェの間の契約
  半遊牧民・半牧半農の不安定な結合
  しっかりした結合のため宗教的契約
  イスラエル民族そのものが契約にもとずく誓約共同体


ヤーヴェ:自然と社会「天地」を創造
      人格的・英雄的激情的
      怒れば疫病・敵軍の侵入・天変地異・懲罰

世界のその時々の状態:国民の行ないとそれに対する神の反作用
            歴史:神の摂理にしたがう・神意にかなったものにいたる過程
 
          ヤーヴェ:一地方神・後に「普遍的な神」となる

         【神の啓示を歴史(特に政治学)に見ようとした預言者達の功績】


中国の宗教:「天」・超感覚的・世界の秩序を保持する一種の神

【東 洋 】:神の前にすでに世界の永遠の秩序が存在
       中 国:「道」・・・・・皇帝は天の子
       インド:「理法」「法」・歴史叙述が少ない
            これらは神の上に存在

      時々の情勢判断と決意によって「世界を管理」するのではない
      永劫普遍の理法にしたがって「世界を運営」する


【西 洋 】:世界はヤーヴェが創出
      永遠の秩序も前から存在していない
      永遠の秩序の神ではない

      「歴史にはたらきかけ、此世を神意にしたがって形成する」 ことを命ずる神

摂理と運命
人間は世界の出来事を「摂理」としてより「運命」として受け取りやすい
今日におけるこの神観の相違・この直接の帰結

例示的預言と使命的預言
【東洋】:預言は勧告的・例示的
      (人間は予言者・成人を尊崇する → 人々の模範)

【西洋】:預言者は神の使
     預言は神の名において人間を拘束
     預言は強制的・倫理的・使命的
      (神は人間に生活の倫理化を要求)【呪術の克服に貢献】

東洋における呪術への屈服の問題
東洋の【呪術への屈服】の原因
  (信仰の支持者層・社会の支配的指導者の特性が反映)

西洋(前述)


伝統的呪術が「大衆」の生活を浸す
教団拡大のため吏僚的司祭によって妥協がこころみられ、呪術への屈服が生ずる 


社会の少数派・前衛(いつの社会にもいる)
  汚濁を忌み、純粋に魅せられ、要求を強くつらぬく

【宗教的達人】 → 新しい預言者・宗教改革者
           呪術の克服

東洋の宗教は特権者層の知識人がこれをになった
東洋:特権者に属する貴族的知識人が前衛
「呪術への屈服」と「社会の停滞」の原因

中国の場合:読書者人・士大夫
儒教倫理:此世は最善のもの
       人間は本来善・自身倫理的な自己完成能力を有する
       自己完成の途:古典の文献学的教養

不 徳 :教養の欠如(原因は経済的貧困)
     此世の否定
     激情・予言

倫理的行為の報酬 :長命・健康・富裕(此世的なもの)
     死後の期待 :名声

楽観主義的人間観 → 原罪思想なし
  罪 :「伝統的権威」に対してのみ
    :「良心」に対してではない

個々の行為 :「礼」の均整ある体系にしたがって此世に順応
         :「倫理的人格」への努力なし


前衛 :読書人・士大夫
(古典の教養をもち科挙に合格・官禄・役得によって巨冨を貯え文人的生活を享受する)
特権者が指導的地位に立った場合の人間観・社会倫理 → 楽観主義的

武人 :死の意味を問わず(生死を運命として受け取る)
:来世も考えず

官吏 :来世を考えず
:非合理的情緒・信仰を軽蔑
:形而上学的欲求と無縁
     特権層としてこの世の幸福を享受しうる
     彼等の合理主義(吏僚的冷淡さを持つ)
     彼等の倫理的思想:修身斎家治国平天下
     天帝の加護によって世界が静穏に・・・・
・    その永遠の秩序にしたがって運営すること 

家産制行政の精神
儒教倫理:あらゆる点で吏僚型の功利主義を最も洗練された形で示すもの

MW・清教主義に見られる「資本主義の精神」と対照的
    「家産(官僚制)的行政の精神」

中国の停滞性
中国:宗教的救済の観点の下への倫理の統一的集中のない国

大衆生活:日常自然の性情と伝統が規制するまま
       伝統主義と呪術:暢気と安易を誘因 → 支配がますます増大

【典型的な営利の国】・・・・・中国
  絢爛無比の古代文化・厖大なる人口・巨大な富の蓄積
  しかし代表的な停滞的社会

  呪術は知性の不安を一時的に静め、行動への勇気を与える点に存在理由
   (中国:隣兵をもたず・安易な生活を営みうる社会)

中国における呪術 → 社会を進歩のための苦しい努力から逃避

この停滞性を中国の特権層は搾取機構の保証に利用


【中国の社会倫理】:停滞性の強化に役立つ

インド:解脱のための苦行と冥想(世界無比の執拗性)
    連綿たる伝統・・・呪術への屈服

インドの場合・ブラーマン
インド宗教の指導的地位 : 特権的知識人

【インドのカスト制】
  ブラーマン (婆羅門・祭司)
  クシャトリア(王候・貴族)
  ヴァイシャ (商人・農民)
  スードラ (奴婢)

  太古より祭司・呪術者は王候・貴族と独立の勢力を形成
  祭司 :王候・貴族を兼ねず(中国との相違)
       インドの弁神論とカスト制度

ブラーマンの宗教思想・・・「輪廻」と「業」の説教が発展
「因果応報」
  霊魂:「前世」から「現世」を経て「来世」に転変
       来世の運命はすべて現世の行為によって決定

古代インド宗教の特質:この原理を一切に貫徹
              カスト制度とともにインド民衆の魂を支配

現世の不満 → 前世の業 → 締観
儀礼的カスト制度を墨守 → 来世のため


MW・宗教思想とカスト制度の関連を重要視
    因果応報のメカニズムに生きる意味 → 生は無意味ではないか?

特権者層知識人の形而上学的欲求
インド知識人:正統派(インド教)
異端派    :(ジャイナ教・仏教)
         共に精神の形而上学的欲求
         個人的・精神的・内面的必要

庶民的立場の宗教的前衛
特権者知識人
:外的困難に対する救い
:内的困難に対する救い
 

救拯の道としての遁此世的思想
インド宗教:特権的知識人が指導者
       救拯の道 → 此世からの逃避と思索

宗教的前衛:輪廻の世界を解脱・涅槃に入ろうとする

  「言語に絶する苦行・禁欲」は此世への働きかけではなく「此世からの逃避」
  (内面的神秘的体験における解脱のための手段にとどまる)

知識貴族の神秘主義と大衆の呪術
インド3000年の徹底した苦行と思索:人類最高の事業の一つ
  「偉大な個人」が生まれたが前衛の仕事にとどまる
   大衆は別の世界

   神秘的体験は線香花火に終わりやすい
   生活を内面から倫理化する力に乏しい
   神秘主義が密教化し、様々な秘儀を生じやすい

  預言者・尖鋭な闘士に続き秘儀をつかさどる祭司の出現
   → 予言者とその後継者に対する神聖視がおこり
   → 祭司の秘儀と大衆向きの戒律とは儀礼化され
   → その形式的墨守の要求が強化され


【「社寺」と「大衆」との関係は「此世的世俗的利益の取引」となる】
これはインドの場合特権層の知識人の形而上学的欲求に出発
                      教義が高遠 → 変質も激しい

大衆の行動:「戒律」によって拘束
罪   悪   :「儀礼」に対するものにとどまる
         原罪思想: なし

要  約
中国とインド・道はことなるが共に呪術に屈服

【中 国】 :儒 教 の 倫 理 化 → 宗教的出発点を有せず
【インド】 :宗教至上主義的倫理化 → 知識人の形而上学的欲求に出発
       (遁此世的)

西洋においても呪術への敗北は繰り返されたが此世的行動を要求する庶民的伝統・西洋独特の「都市」と「市民」が支える


さらに
 a・イスラエル・ユダヤの予言者祭司による神観・倫理的予言の仕上げ
 b・原始キリスト教において「知恵と改悟による救済を主張する偏向」を最初から克服
 c・勤労が禁欲の形式として尊重・「働かざるもの食うべからず」
 d・中世修道院内部における勤労に関する合理的禁欲的技術の発展

   16・7世紀に内此世的禁欲の大量出現により画期的に呪術を克服


第六章  此世における良き戦いのために どこまで耐えられるか・・・私はそれを見たい

福音書の理想が示す人間性の要求を実現することが理想
マックス・ウェーバーにとっての学問・・・・・ 「この理想を堅持しつつ、生を正しく生きるため」

1・ 人間性の要求と近代社会
林悟堂における中国人とアングロ・サクソン
中国人:世俗的な日常のくらしを楽しもうとする
     極端を忌み、中庸・妥協・寛容を愛する

法律上の正義についての中国人の処世訓
  「正義は盲目」
  「正義と慈悲がいい按排に調合されたとき、地上の権力は神のそれに一番近い姿になる」
  「賢いことをたっとむ」
  この点で中国人の生活態度はアングロ・サクソンによく似ている


アングロ・サクソンとの相違についての付記

@ 制度に対する信頼の有無・・・・・・・林悟堂
  此世と知恵の尊重は同様
  動機は半世俗的な清教主義の貢献・・MW

A 中国人の世俗主義・読書人(支配層)の官僚功利主義
  (※)中国の商業も早期世俗化に一役(MWの資料不足・著者)

あたたかい人間愛への要求

  福音書:生活態度に「極端の間につり合いをとる賢明さ」を求めず

  福音書の「賢さ」:「蛇のごとく賢く、はとのごとく素直なれ」(大切)

  「家」の精神的雰囲気
  「同胞愛」の倫理
  善意

福音書の要求:家族だけでなく、一切の人々に対して計算的な知性(林悟堂の説く)を排除

人間性の要求から現代を反省する
福音書の要求:キリスト教取徒だけでなく、全人類の要求
「現代」における「福音書の要求の可能性」は?

経済と政治
経  済  :社会主義者の資本主義批判
政  治  :民衆の官僚の「組織の力」による独裁との戦い
国際政治:合理的運営の巨大能率 → 民族闘争と戦争のため

現代の絶え難さ
【現代における価値ある行為】
  多面な人間性を棄て、専門的勤務に没頭することなければ不可能
  現代は「仕事」と「諦め」は不可分
  完全に美しい人間性を持つ時代からにの「決別」と「断念」


清教徒:救済のため、みずから進んで職業人たらんと欲した
現代人:生きんがため、やむをえず職業人たるほかなし


禁欲主義が修道院から出て職業生活に移る
  → この世の倫理を支配しはじめる
  → 技術的・経済的な「力学的機械的生産」に結び付いた
  →「力強い近代的経済秩序の機構」は発展

今日では一切の人間が  生まれながらにしてこの連動装置にはめ込まれており
一切の人間の生活様式は
この機構によって圧倒的強制力をもって規定されており
地下の化石燃料の最後が燃え尽きるまで   規制されつづけるであろう
    

ウェーバーの近代社会の特徴づけとその前提をなす関心
没主観的官僚制・・・近代主義の特徴
福音書の教える人間内部の要求に立脚して近代社会をながめる

近代社会:形式合理性・没主観性・官僚制

事実の分析・・・理論の構成・没主観的
研究の推進・・・主体的要求(人間的要求)

政治・経済などの部分的考察
政治・経済問題の考察
人間性の要求と「此世の緊張」に身をおく

理想を堅持しながら困難なたたかいを戦うためのもの


2・ 此世とのしての社会
かわらぬ顔とかわる顔
生活領域・文化領域の歴史的研究 → 近代合理主義の比較史的自叙伝

近代合理主義:近代社会の没主観的性格

世界諸社会の内部的機構関連の探求・根気強く同じの目で合理化とともに個々の生活領域のロジックの相克がいよいよ露骨になる

預言者:呪術的倫理を情緒によって溶融・純化し、伝統を内面から革新
     :此世の緊張を激化させる

世俗的生活の諸領域での合理化と純化の進行
  (財の所有の合理化と純化が進行)

個々の内部的固有法則がはっきりと意識されだし 外部に出なかった相克関係が、顕著に現われるようになる  (同胞愛の要求の範囲は社会団体を越えて拡大)


キリスト教に源を発する近代資本主義社会の発展が他宗教との間において相克関係を引き起こす・・・・?

このロジックを中心とする個々の領域の考察、近代社会の合理性
                         
「気を付けろ、悪魔は老かいだぞ」
此世の個々の領域:「悪魔的なるもの」を蔵する

             悪魔を圧殺するよりも利用活用することが賢明

             高度合理化社会の賢明さ
             悪魔:心中の賊に由来

次の問題
人間の要求と此世の緊張:激化の一途
  「絶対に逃避してはならぬ」
  「あくまで没主観的に・知性的に生きる」・・・MW

清教徒の「正義しく勤勉な生き方」を生活理念として主張


3・ 現代の位置
西洋合理主義の勝利への反省





世界と自己の生の「意味」を「思索」によって探求しようとしたり、合理主義的な努力が失敗に帰したのち、それを「体験によって悟ろう」としたりする努力、またこの「体験」を間接に合理主義的に、意識に登らせようとする努力・・・・・こうした努力を知識人層がつづけるところでは インドのような「表現不可能な神秘主義」の広い荒野に結局到達する



知識人層がこうした遁此世的努力を棄てて、美しい態度のあの典雅・上品さをもって、「此世内部での自己完成」という可能な最高の目標と見るところでは、高貴の意義について、結局、かの「儒教的理念」に到達する・・・・・・・・MW


「飾ることなく日々の要求に則して行動することによって、現実の此世に対する関係を、倫理的人格が意味するように形成する」思想・・・・・【西洋独特の概念】
また「固有な法則を没主観的に発見し、周囲の世界を実践的に支配しようとする」思想
・・・・・【西洋の純粋に没主観的な合理主義】
・・・・・共にアジアの知識人層の文化には縁遠いものである
現代の西洋の危険:




自分一人だけが固有のものをあさり求め、これによって自力で罪業の 泥沼から自分一人頭をぬきんじようと試みること

東洋のように生活様式が儀礼的・僧侶的に型にはめ込まれる場合・・・危険はない

如何なる西洋の伝統を如何なる意味で自己の立場とするか
宗教的伝統の相違の意義・・・MWの要約

MWの立場
  イスラエルの預言者から紆余曲折を経て清教主義にいたる伝統に立脚
  西洋の伝統もけっして完全無欠ではない
  インド・中国の知識人の示す生き方も それぞれの存在理由を持った形としてみとめる
    (たぐいまれな人間的深さを持った巨人の出現等・・・)

  しかし、遁此世的神秘主義・内此世的耽美主義は容認しない

  理由は東洋が大衆を呪術から解放しないから・・・
  知識が自然・社会・文化の没主観的認識によって大衆の幸福を増進しないから・・・・

ウェーバーの学問論
「政策」と「学問」を峻別

学問:経験と論理によって「然り然り、否否」と答えられる判断の体系

学問的認識:客観的たりうる

政策的主張:事の是非を主張
        事の是非は経験と認識とからだけでは出てこない
         (つじつまについては経験と認識だけでいえる)
       「何が良い・何が悪い」 は論者の主観にもとづいて下す判断

政策的主張は主観性(趣味・世界観・政治的立場)を含む
それゆえ学問的判断と政策的判断とは区別されねばならぬ

学問の名において政策を説き
これによってその主張の普遍妥当性を大衆に強要すること
        ・・・・・学問の権威の濫用【しばしば学者がおちいるこころみ】

没主観性と明晰・・・・・唯一の学者の標語


幻想なしに事実を見ること
  西洋の伝統は「神と人間とを隔絶し」
  神祐天助の期待を不可能ならしめ
  幻想なく自然と社会とに直面させた
  此の呪術の克服が(近代的制度と近代科学とを通じ)大衆の幸福を増進させた

大衆の幸福はねがわしい
  そのためにはまず、一切の希望をすてて、現実を見ることが必要

学問と政策の混同は、この点の無理解にもとづき羊頭狗肉
  期せずして「近代化の道」をふさぐ

情熱への逃避は何も産まぬ
客観的分析を主観的な趣味・希望・心情・政治的立場で色づける
  → 有情者的に生きることに対する人間のやみがたい郷愁

此世の窒息感に対する人間の反逆
  ・情に生きる
  ・事務的・理知的・没主観的な生を忌避、否定し逃避

MW:かかる主情的努力は甲斐のないもの
    繊細な感情をふみつぶす現実を
    男らしく「現代の宿命」として受取り
    そこから出発せねばならぬ



究極的・至上的価値は「今日」において此世の奥にある神秘的体験の国、あるいは直接に接触しあう私人相互間の同胞愛に、かろうじて見られるだけで、公共の世界から姿を消している
・・・・・これは「現代の宿命」である

現代では如何にすぐれた芸術ももはや内輪の仕事にとどまり、壮大な記念碑的存在ではなくなった

嵐のような炎となり、大教団を貫徹し、一つに融溶したあの予言者の零気・あの力に匹敵するものは、現代では小規模なサークルでかすかに、脈うっているにすぎない

こうした事実はけっして偶然ではない

記念碑的壮大さをもつ芸術的情緒を無理に作りだしたり、「案出」したりしようとしても、無駄である
ここ20年間の記念芸術品に見るような無残な出来損ないができるだけである


新しい真の予言もないのにへ理屈をひねって、新しく宗教を興そうとしても、無駄である
同じような出来損ないができ、しかもこの場合は一層悪い影響をもたらさずにはすまない

世渡りだけが人生ではない(※)
MW:主情的な諸傾向を退ける
    世俗的な世渡りに自己を埋没せよというのではない


「われわれはその生き甲斐をかけた理想を持たねばならぬ」
「鬼人のごとくわれわれをとらえ、われわれを魅了しつくすごとき理想を持たねばならぬ」

デーモンを持ち、生をこのデーモンに奉仕させる


知性的誠実
良心の命令への奉仕:熱情的であらねばならぬ

「熱情なくしては価値ある何ごともなしえない」
「この激情は個人の生においても知性的没主観的行動の分厚い表皮によっておおわれねばならぬ」

地上の神々の闘争(※)
宗教的予言から、あの「倫理的合理的生活態度」が生みだされ
その合理主義がそれまで雑居していた多くの神々を廃位し
やむをえない、一つの神だけに 支配権を集中した

しかしこの唯一の(救済者としての)神の支配の時代は
宗教改革・清教徒の「呪術の克服」を最後の輝きとしてすでにすぎた

今やふたたび、多くの神神が呪術の克服の結果
神秘的・超日常的な力を失い
非有情者的・没主観的な力の形をとりながら
その永遠の戦いをはじめた



趣味・理想・心情・世界観・政治哲学・・・・・・人によってそれぞれ主体的に異なる
知性、学問はつじつまをあわせるだけ・・・・・その究極の対立を解くことはできない
しかも救済によってこの対立を超日常的に整理する神
                      ・・・・・・もはや存在しない

知性の固執(※)
MW:知性と没主観的態度とを固執する

自己の理想について謙虚たれ
知性の固執は説くが、それは世渡りのためではない
・・・・・熱情の対象への奉仕のため


内核に位置する灼熱の倫理で、外装である此世内部の行動を、完全に統制させるため、知性は行使される

理想は共鳴を求める
MW:その共鳴を「謙虚と寛容」に要求

   「強制と嬌慢」を唾棄

     預言者の辻説法・選挙候補者の街頭演説・新聞雑誌での自由な論議
     友情にみちた座談討論・・・・
              ・・・おしつけがましさを伴なわず
                 謙虚に相手の知性と意識の最深層に訴えて
                 理想への共鳴を求める

人為的に神秘的内面的「体験」を造出して 超人的「人格」を誇称し、他人にその偶像崇拝的礼賛と隷従とを要求する
・・・ ・・・詐欺もしくは自己欺瞞・・・・・・世を毒するにすぎない


教室を政治的宣伝その他に利用し、大学を僧侶の学校に変えることは、MWにとっては「教会への逃避」よりも「世俗主義」よりも罪深いこと

此世の尊重(※)
知性に固執し謙虚・寛容にその良心にしたがわねばならぬ
また内此世的でなければならぬ


此世の日々は現代においていよいよ苛酷

呪術の克服によって神はあの救拯の魅力を失う
新しい神々は、たがいに戦いながら、人間にあの没趣味・没主観的な勤務を課する

「しかしこの日常を逃避してはならぬ」
現代の人間・特に若い世代にとって最も困難なことは、こうした日常に耐える、ということである

知性を信頼せず、いわゆる「体験」をあさるこころみは、すべてこの弱さから生まれる
けだし、弱さとは、「時代の運命」を正面切って正視しえないことであるからである

最後の言葉
「熱情なくして価値ある仕事は何一つできない」

  われわれの熱情は、着実な計算を忘れ、 ひたすら人を驚かす大事業を夢見るあまり、
  日々を徒費することにおわりやすい
マックス・ウェーバーの熱情

  世間の耳目をそばだてるかは、どうでもいい
  「自分に出来なかったことは、誰か他人が成就するだろう」
  自分一個の運命に対しては、不平一ついわず、だんこ平静を持したまま、
  日々の仕事に没入していく

  「一日の苦労は一日にて足れり」
  日々の仕事を熱情がつらぬき、 したがって日々の営みが正義しく勤勉にはたされるならば、
  そこに完全な満足と充分な安心とが見出だされるはずである


  締観的意味でなく、むしろ積極的能動的態度をもって、
  また貴族的心情的意味でなく、市民的理知的態度をもって、
  「日々是好日」と観じつつ、その日その日の営みに生き甲斐を見出だすこと


  空疎かつ感傷的な英雄主義ではない
  熱情的な生は英雄的であるにしても、
  その英雄は、天賦にかわりなく 、世俗に生きながら誰でもなれる英雄である


結 論(※)

  自分の仕事につき、人間的にも職業的にも、「日々の要求」に対してその本分を励め
  各人はその生をとらえみちびく熱情の対象をもつはずである

  この熱情の対象(デーモン)を見出し、その命令にしたがうかぎり、
  この仕事は素直かつ容易にはたされるはずである


青山秀夫著  『マックス・ウェーバー(キリスト教ヒューマニズムと現代)』 岩波新書より
マックス・ウェーバー理解のための個人的レジュメ
稲葉八朗

昭和63年3月6日 初版
平成12年11月17日インターネット